エージェント基盤・プロトコル

コンテキスト設計とは|必要な1件を渡すのに、34倍の文書を一緒に送っていた

コンテキスト設計とは何を設計することなのか文脈を多く渡すと何が起きるのか何を渡して何を渡さないのか

AIに参考資料を渡すとき、多い方が正確に答えてくれる気がします。関係ありそうな文書を全部添えて、あとは判断してもらう。よくある作りです。

今回は計測しました。必要な事実を1件だけ含む文書群を作り、置く位置と件数を変えています。結果を先に言うと、必要な1件に対して34倍の量を一緒に送っていました

この記事の要点

  • コンテキスト設計は何を渡すかを決める作業。多く渡せばよいわけではない
  • 実測では、必要な1件に対して34倍の文書を一緒に送っていた
  • 絞り込むと978字を削減できた
  • 推奨は単純な構成から始めること。足すのは必要になってから

コンテキスト設計とは何を設計することなのか

AIに何を渡すかを決める作業です。指示・参考資料・履歴・ツール定義の4つを、量と順序まで含めて設計します。

コンテキスト設計で扱うのは、AIに何を渡すかです。プロンプトの文言を練る作業だと思われがちですが、実際には渡す情報の選択と配置まで含みます。

渡しているものは4種類

エージェントに渡る内容は、大きく4つに分かれます。役割を伝える指示、参考にさせたい資料、これまでの履歴、そして使えるツールの定義です。

このうち資料と履歴は放っておくと膨らみます。検索結果を全部添える、履歴を全部積む、という作りにすると、量が制御できなくなります。

複雑にする前に単純な形を試す

Anthropicは、多くのチームを見てきた経験として、成功している実装は複雑な枠組みではなく単純で組み合わせやすい形を使っていると述べています。

コンテキストについても同じことが言えます。凝った検索や要約の仕組みを組む前に、渡す件数を絞るだけで改善する場合が少なくありません。

余談 「文脈が長い=賢くなる」ではない

扱える文脈の長さは年々伸びています。ただし長く渡せるようになったことと、長く渡した方がよいことは別です。量が増えれば費用も応答時間も増えます。次の節で、その量を実際に測ります。

出典Anthropic Engineering「Building effective agents」2026-08-17 確認
the most successful implementations use simple, composable patterns rather than complex frameworks
原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17

必要な1件に対して、34倍の文書を送っていた

必要な事実を1件だけ含む文書群を作り、置く位置と件数を変えて計測しました。絞り込むだけで978字を削減できます。

コンテキスト設計の効果を確かめるため、実際に測りました。返品期限という必要な事実1件を、無関係な参考資料の中に埋めています。

測ったのは、渡す文脈の総文字数と、必要な事実が先頭から何文字目に現れるかです。

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必要な事実1件を、文書群のどこに置くかで「読み始めてから何文字目」が変わる

文書数  総文字数  必要な事実の位置   先頭からの割合
   5件     162字  先頭         7字目     4%
   5件     162字  末尾       139字目    86%
  30件    1008字  先頭         7字目     1%
  30件    1008字  末尾       985字目    98%
  30件    1008字  中央       509字目    50%

--- 必要なものだけ渡した場合 ---
   1件      30字  先頭       7字目     23%

30件・末尾に置いた場合と比べた文脈量の差: 34倍
削減できる文字数: 978字

差が出ました。34倍です。必要な情報は30文字しかないのに、それを見つけてもらうために1,008文字を送っていることになります。

同じ量でも位置で変わる

もう1つ見てほしいのが位置です。30件の場合、必要な事実が先頭なら1%の地点、末尾なら98%の地点に現れます。同じ量を渡していても、探す距離が違います

長い文脈では、中ほどに置かれた情報が見落とされやすいことが知られています。上の表で中央に置いた場合は50%の地点でした。ここが最も不利な位置になります

絞るのが最も効く

位置を工夫するより、そもそも渡す件数を減らす方が確実です。1件だけ渡せば、位置の問題自体が消えます。

渡す件数を絞ると、文脈量が桁で変わる。位置の工夫より効果が大きい。

検索結果をそのまま渡す結論上位だけに絞る根拠必要なものだけ渡す事実・数値同じ答えを出すのに必要な情報は30字。上の段ほど、無関係な文書を一緒に送っていることになる。
図1 ── 渡す文書の件数と総文字数
出典Anthropic Engineering「Building effective agents」2026-08-17 確認
we recommend finding the simplest solution possible, and only increasing complexity when needed
原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17

何を渡して、何を渡さないのか

判断の基準は、答えを出すのに必要かどうかです。あると便利そうなものは渡しません。件数の上限を先に決めます。

コンテキスト設計で迷うのは、境界をどこに引くかです。渡しすぎると埋もれ、渡さなすぎると答えられません。

渡すもの

  1. 答えに直接使う事実。数値・期限・条件など
  2. 判断に必要な前提。誰からの依頼か、どの状態か
  3. 直近のやり取り。文脈がつながる範囲だけ
  4. 使うツールの定義。その場面で必要なものに絞る

渡さないもの

  1. 関連しそうな参考資料。検索で上位に来ただけのもの
  2. 古い履歴。要約に置き換えるか、切り捨てる
  3. その場面で使わないツール。選択を誤る原因になる
  4. 念のための注意書き。毎回送られる分、費用になる

上限を先に決める

実務で効くのは、渡す件数の上限を決めておくことです。上位3件まで、履歴は直近5往復まで、といった形で決めます。

上限があると、増えたときに何かを落とす判断が発生します。この判断を先送りにすると、いつのまにか全部渡す構成に戻ります。

渡すかどうかは「答えに要るか」で決める。あると便利そうは渡さない理由になる。

答えを出すのに必要な情報かいいえ渡さない。あると便利は理由にならないはい上限の件数に収まるかいいえ関連度の低いものから落とすはい渡す。重要なものは先頭か末尾に置く上限に収まらない場合、何を落とすかを決める必要がある。この判断を避けると全部渡す構成に戻る。
図2 ── 情報を渡すかどうかの判断

Anthropicの推奨は、可能な限り単純な解から始めることでした。場合によってはエージェント的なシステム自体を作らないという選択も含む、とされています。文脈の設計も同じで、複雑な仕組みを入れる前に件数を絞ることから始まります。

渡す量は費用に直結します。詳しくはエージェントのコスト制御の記事で扱っています。構成そのものを単純にする話は決定的ワークフローの記事にあります。

実際に使われた部分を測る何を渡すかの判断は、推測ではなく記録から決められます。答えの中で実際に引用された資料はどれかを記録しておくと、渡しているのに一度も使われていない資料が見つかります。そこから削るのが確実です。
出典Anthropic Engineering「Building effective agents」2026-08-17 確認
This might mean not building agentic systems at all.
原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17

よくある質問

全部渡しておけばAIが選んでくれませんか?
選べる場合もありますが、量が増えるほど費用も応答時間も増えます。また必要な情報が長い文脈の中ほどにあると、見落とされやすくなることが知られています。渡す前に絞る方が確実です。
絞り込みはどうやるのですか?
検索で候補を出し、その中から上位数件だけを渡す方法が一般的です。件数を決め打ちするか、関連度の閾値で切ります。どちらにしても、渡す件数に上限を設けることが要点です。
並べる順番は影響しますか?
影響します。重要な情報は先頭か末尾に置く方が扱われやすいとされています。関連度の高い順に並べる、指示は末尾に置く、といった工夫が使われます。
システムプロンプトは長い方がよいですか?
長さではなく明確さです。毎回送られるため、長いほど費用が増えます。必要な指示だけを簡潔に書き、例を出す場合も数を絞る方が扱いやすくなります。

まとめ

  • コンテキスト設計は渡す情報を選ぶ作業
  • 実測では必要な1件に対して34倍の量を送っていた
  • 絞り込むだけで978字を削減できた
  • 並べ方も影響する。重要なものは先頭か末尾に置く

今日から始められること

  1. AIに渡している文脈の総量を測る
  2. そのうち実際に答えに使われた部分がどれかを確認する
  3. 渡す件数に上限を設ける
  4. 重要な情報を先頭か末尾に置くよう並べ替える

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