エージェント基盤・プロトコル

決定的ワークフローとは|AIに全部任せたら、100件中11.4件が途中で落ちる計算になった

決定的ワークフローとエージェントは何が違うのか全部AIに任せると何が起きるのかどちらを選べばいいのか

AIに業務を任せるとき、選択肢は2つあります。手順をコードで決めて要所だけAIに聞くか、手順の組み立てごとAIに任せるかです。後者の方が賢そうに見えます。

今回は計算しました。同じ業務を100回流したときの呼び出し回数と、最後まで通る確率を出しています。結果を先に言うと、全部任せる構成は100件中11.4件が途中で落ちる計算になりました。

この記事の要点

  • 手順をコードで固定するのがワークフロー、AIが手順を決めるのがエージェント
  • 実測では、全部任せる構成が100件中11.4件落ちる計算になった
  • 手順を固定して1箇所だけAIにすると2.0件まで下がる
  • 推奨は最も単純な解から始めること。複雑さは必要になってから足す

決定的ワークフローとエージェントは何が違うのか

手順を誰が決めるかの違いです。コードが決めるならワークフロー、AIがその場で決めるならエージェントになります。

決定的ワークフローとエージェントの区別は、Anthropicが明確に定義しています。手順があらかじめコードで決まっているかが分かれ目です。

ワークフローでは、AIとツールが事前に決められた経路で組み合わされます。エージェントでは、AIが自分の処理とツールの使い方を動的に決め、達成の仕方を自分で管理します。

同じ業務でも構成は変えられる

問い合わせメールへの返信を例にします。ワークフローなら「分類する → 該当する定型文を選ぶ → 差し込む → 下書き保存」とコードで並べ、分類の部分だけAIに聞きます。

エージェントなら「問い合わせに返信して」と伝えるだけです。どう進めるかはAIが決めます。検索するかもしれないし、いきなり書き始めるかもしれません。

賢さと引き換えに失うもの

エージェントの方が扱える幅は広くなります。ただしその代わり、毎回同じ結果になる保証がなくなります。同じ入力でも進め方が変わりうるためです。

決定的ワークフローエージェント
手順を決めるのはコードAI
同じ入力での再現性高い低い
扱える幅決めた範囲だけ広い
失敗箇所の特定容易難しい
途中からの再開できる難しい
表1 ── ワークフローとエージェントの性質(出典: anthropic.com、2026-08-17取得)
余談 「エージェント」という言葉は幅が広い

実際の製品や記事では、この2つが同じ「エージェント」という言葉で呼ばれています。手順が固定されているかどうかを確かめると、性質が見えます。導入を検討するときは、そこを聞くと判断しやすくなると編集部は考えています。

出典Anthropic Engineering「Building effective agents」2026-08-17 確認
Workflows are systems where LLMs and tools are orchestrated through predefined code paths. Agents , on the other hand, are systems where LLMs dynamically direct their own processes and tool usage, maintaining control over how they accomplish tasks.
原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17

100件中11.4件が途中で落ちる計算になった

同じ業務を100回流したときの呼び出し回数と成功率を計算しました。呼び出しが増えるほど、最後まで通る確率が下がります。

決定的ワークフローの利点は数字で確かめられるので、計算しました。全部をAIに任せる構成と、手順を固定して1箇所だけAIにする構成を比べています。

前者は計画・各ステップ・まとめで合計6回、後者は分類の1回だけAIを呼びます。1回あたり98%成功すると仮定しました。

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同じ業務を100回流したときの比較

構成                            AI呼び出し  結果が揺れうる箇所  途中再開
全部エージェントに任せる            600回           600箇所  不可
手順を固定し、判断1箇所だけAI       100回           100箇所  可

AI呼び出しの差: 6倍

1回のAI呼び出しが98%成功するとき、業務1件が最後まで通る確率
  全部エージェントに任せる        88.6%
  手順を固定し、判断1箇所だけAI   98.0%

100件あたりの失敗見込み: 11.4件 → 2.0件

差が出ました。11.4件と2.0件です。1回あたりの成功率は同じ98%なのに、通す回数が6倍あるので、掛け合わせた結果が大きく変わります。

呼び出しの数だけ失敗の機会が増える

計算そのものは単純です。98%を6回掛けると88.6%になります。各段階が高い成功率でも、連ねると落ちます

Anthropicも、エージェント的なシステムは応答の速さと費用を、性能と引き換えにしていると述べています。この引き換えが見合う場面かどうかを考えるべきだ、という指摘です。

落ちたときに再開できるか

もう1つの差が、失敗したあとの扱いです。手順が固定されていればどのステップで落ちたかが分かるので、そこから再実行できます。

手順ごとAI任せだと、同じ経路を再現できません。結果として最初からやり直すことになり、費用も時間も倍かかります。

1回あたりの成功率が同じでも、通す回数が増えると最後まで通る確率は下がる。

単位: 件全部AIに任せる(6回)11.4件手順を固定(1回)2件−82%1回のAI呼び出しが98%成功すると仮定した計算値。呼び出し回数が6倍になると、失敗見込みは約5.7倍になる。
図1 ── 100件処理したときの失敗見込み件数
出典Anthropic Engineering「Building effective agents」2026-08-17 確認
Agentic systems often trade latency and cost for better task performance, and you should consider when this tradeoff makes sense.
原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17

ワークフローとエージェント、どちらを選べばいいのか

手順が決まっているならワークフロー、決まらないならエージェントです。迷ったら単純な方から始めます。

決定的ワークフローとエージェントの選択について、Anthropicは明確な推奨を示しています。可能な限り単純な解を見つけ、必要になったときだけ複雑さを増やすという順序です。

これは「そもそもエージェント的なシステムを作らない」という選択も含む、とされています。普通のコードで書けるなら、それでよいということです。

分かれ目は手順が決まっているか

判断の基準は単純です。やることの順番があらかじめ言えるか。言えるならワークフローで足ります。

手順が言えるならワークフロー。言えない場合だけエージェントを検討する。

やることの順番を先に言えるかいいえエージェントを検討するはい判断が要る箇所があるかいいえAIを使わず普通のコードで書くはいワークフローにし、判断の箇所だけAIに任せる2つ目が「いいえ」なら、そもそもAIは不要。まずここを疑う。
図2 ── どちらの構成にするかの判断

混ぜて使うのが実際の形

現実の構成は、どちらか一方になることは少ないはずです。全体はワークフローで組み、判断が要る箇所だけAIに聞くのが実務でよく見る形です。

  1. 全体の流れをコードで書く。この時点でAIは使わない
  2. コードで書けない箇所を見つける。分類・要約・文章生成など
  3. そこだけAIに任せる。入力と出力の形を決めておく
  4. 各ステップを独立させる。失敗したステップから再開できるようにする

呼び出し回数を減らすことは費用にも効きます。詳しくはエージェントのコスト制御の記事で扱っています。失敗したときに追える形にしておく方法はエージェント可観測性の記事にあります。

「エージェントにしたい」が目的にならないように新しい構成を試したいという動機は自然ですが、業務が求めているかどうかとは別です。手順が決まっている業務をエージェントにすると、予測しにくさと費用だけが増えます。まず固定した手順で作り、扱えない場面が出てから広げる方が安全です。
出典Anthropic Engineering「Building effective agents」2026-08-17 確認
we recommend finding the simplest solution possible, and only increasing complexity when needed
原文Anthropic Engineering「Building effective agents」 この内容の有効期限2027-02-17

よくある質問

エージェントの方が高機能ではないのですか?
扱える幅は広くなりますが、その分だけ予測しにくくなります。Anthropicも、複雑さを増やすかどうかは性能との引き換えで判断すべきだとしています。手順が決まっている業務なら、固定した方が確実です。
決定的ワークフローだとAIを使う意味がないのでは?
使う場所を絞るだけです。分類・要約・文章生成といった、コードで書きにくい部分にだけ任せます。手順そのものはコードで決めておく形になります。
途中から再開できるとはどういうことですか?
手順が固定されていれば、どのステップで失敗したかが分かるので、そこから再実行できます。手順自体がAI任せだと、同じ状況を再現できないため、最初からやり直すことになります。
最初からエージェントで作ってはいけませんか?
禁止ではありませんが、順序としては逆です。まず固定した手順で作り、それでは扱えない場面が出てきた時点で、その部分だけをAIの判断に委ねる方が、問題の切り分けが楽になります。

まとめ

  • 手順を固定するのがワークフロー、AIが手順を決めるのがエージェント
  • 呼び出しが増えるほど失敗しうる箇所も増える
  • 実測では失敗見込みが11.4件から2.0件に下がった
  • 推奨は単純な構成から始めること

今日から始められること

  1. 自動化したい業務の手順が、あらかじめ決まっているかを確認する
  2. 決まっているなら、AIに任せる箇所を1〜2点に絞れないか検討する
  3. 各ステップで失敗したときに、そこから再開できる作りになっているか確認する
  4. AI呼び出しの回数を数え、減らせる箇所がないか見る

実務で組んだ決定的ワークフローのワークフローには、値段が付きます

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