AIに調べものをさせると、検索結果が会話の履歴にそのまま積み上がっていきます。これを避けるため、調べる作業だけ別のAIに投げて、結果の要約だけ受け取る構成があります。サブエージェントと呼ばれます。
積み上げてみると、本体の会話に残る量は9,100トークンから1,950トークンに減りました。ところが下請け側の費用を足すと、合計はむしろ増えます。
本体が作業を切り出して下請けに投げ、下請けは自分の会話の中で作業して、結果だけを返します。
サブエージェントは、本体とは別の会話を持つAIに作業を投げ、結果だけを受け取る構成です。下請けの側は自分の会話を持っていて、そこで検索や読み込みを済ませます。
本体は仕事の全体を見て、どの部分を誰に投げるかを決めます。下請けは投げられた部分だけを扱い、終わったら要約を返します。下請けの会話は返した時点で捨てられます。
Anthropicも自社の調査機能について、まとめ役のエージェントが全体を進めつつ、並行して動く専門の下請けに委任する構成だと説明しています。
サブエージェントは、複数のAIを組み合わせる構成のうち上下関係のある形にあたります。対等な相手に仕事を渡していく形はハンドオフの記事で、まとめ役が全体を割り振る形はオーケストレータ/ワーカーの記事で扱っています。
呼び名は実装によって揺れます。ですから名前ではなく、下請けの会話が本体と分かれているかどうかで見分けるのが確実です。
実装していて効いたのは、下請けに返してほしい形式まで指定しておくことでした。指定しないと下請けが調べた過程まで返してきて、切り出した意味が薄れます。編集部では、返す項目と字数の上限を渡すようにしています。
Our Research system uses a multi-agent architecture with an orchestrator-worker pattern, where a lead agent coordinates the process while delegating to specialized subagents that operate in parallel.原文Anthropic Engineering「How we built our multi-agent research system」 この内容の有効期限2027-02-17
調べる量が多く、結果を短くまとめられる仕事です。逆に本体の文脈を全部知らないと進まない仕事には向きません。
サブエージェントに切り出す価値があるかどうかは、読み込む量と返す量の差で決まります。たくさん読んで少しだけ返す仕事ほど、切り出す効果が大きくなります。
Anthropicは、下請けがそれぞれの文脈を持って並行して動き、重要な部分だけをまとめ役に凝縮して渡すことで圧縮が働くと述べています。読み込みの大部分を下請け側に閉じ込められるためです。
調べものはこの形にはまります。10ページ読んで3行にまとめるなら、本体に残るのは3行だけで済みます。
3番目と4番目に注意してください。Anthropicも、すべてのエージェントが同じ文脈を共有する必要がある領域や、相互の依存が多い領域は今のところ向かないとしています。
同じ文書には、エージェントは通常の会話の約4倍、複数を組み合わせた構成は約15倍のトークンを使うという数字も出ています。切り出しは節約の手段ではありません。
ですから採用の判断は、費用ではなく本体の履歴を短く保つ価値があるかで行うことになります。次の節で、その差を数えます。
たくさん読んで少しだけ返す仕事ほど、切り出す効果が出る。
Subagents facilitate compression by operating in parallel with their own context windows, exploring different aspects of the question simultaneously before condensing the most important tokens for the lead research agent.原文Anthropic Engineering「How we built our multi-agent research system」 この内容の有効期限2027-02-17
本体に残る量は9,100トークンから1,950トークンへ減りました。ところが10往復させると、累計は91,000と105,500トークンで逆転します。
サブエージェントに切り出すと何がどれだけ変わるのかを、トークン量を積み上げて確かめました。題材は検索を3回はさんで答える場面です。
断っておくと、これは実際の課金額ではありません。1回の検索結果が何トークンになるかを置いて積み上げた試算です。置いた値はコードに書いてあります。
検索を3回はさんで答えるとき、本体の会話に残る量 本体に全部混ぜる: 9,100 tok 下請けに切り出す: 1,950 tok(本体)+ 8,600 tok(下請け・使い捨て) 本体の履歴の差: 4.7倍 この会話を続けたときの、本体に送る累計(往復ごと) 往復 本体に混ぜる 下請けに切り出す 1回 9,100 tok 10,550 tok 3回 27,300 tok 31,650 tok 5回 45,500 tok 52,750 tok 10回 91,000 tok 105,500 tok
2つの数字が逆を向いています。本体の履歴は4.7倍の差で切り出した側が小さいのに、累計では切り出した側のほうが大きいという結果です。
下請けも呼ぶたびに費用がかかるためです。本体で1,950トークン節約しても、下請け側で8,600トークン使っています。作業そのものが消えたわけではなく、置き場所が変わっただけです。
Anthropicが示している約4倍・約15倍という数字も、同じ方向を指しています。切り出しは費用を下げる手段ではありません。
減っているのは本体の履歴です。履歴は毎回まるごと送り直されるため、長くなるほど1往復あたりの負担が増えていきます。
会話が続く仕事では、この差が効いてきます。検索結果が積み上がった履歴を抱えたまま20往復、30往復と続けると、本体の1回あたりの送信量が膨らみ続けるためです。
とはいえ数往復で終わる仕事なら、切り出さないほうが安く済みます。上の表でも、1往復の時点ですでに切り出した側のほうが多く使っています。
本体の履歴は減る。ただし作業は消えず、下請け側に移る。
In our data, agents typically use about 4× more tokens than chat interactions, and multi-agent systems use about 15× more tokens than chats.原文Anthropic Engineering「How we built our multi-agent research system」 この内容の有効期限2027-02-17
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